この度は、文教大学東京あだちキャンパスの開設、誠におめでとうございます。文教大学は、女子に学問と縫製や家政の技能を教える女学校として1920年代に始まり、長い歴史を持っていると伺いました。私自身、20世紀初頭の国際的な教育議論が、アフリカやアジアに及ぼした影響を研究したことがあり、女子教育を推進することが当時いかに先進的で困難であったかを考えると、建学の理念の高さに改めて感銘を受けます。また、今年開設された東京あだちキャンパスでは、地域社会との融合、対話を目指しておられるとのこと、グローバルな課題を議論しつつ、日本社会に還元し、地域に根差した研究を進めたいと願う国際開発学会の趣旨とも呼応するものが多いと感じております。
情報・通信技術の進歩は、私たちに遠くの国の出来事を身近に感じさせてくれるようになりました。その一方で、社会格差と断絶、政治への不信、いじめや引きこもりなど、私たちの足元にある問題は深刻さを増しています。コロナ禍に見舞われたこの1年余の間に、海外で調査を行うことの多い国際開発の研究者のなかには、立ち止まることを余儀なくされ、日本社会に生きつつこの分野の研究をすることの意味を自問した方も少なくないのではないでしょうか。
そうした中で、地元との融合を図る文教大学東京あだちキャンパスのスタンスから、私たちも学ばせていただくことも多いのではないかと思います。本大会のご盛会を心からお祈りいたします。